訪問した万葉歌碑

交野が原万葉学級の郊外学習と編集人が訪問した万葉歌碑を徐々にアップしていきます。
尚、場所の後の住所をクリックすると地図が開きます(マーキングが無いものは、ほゞ真ん中が歌碑のある場所です)

第3回郊外学習:明日香の彼岸花と万葉歌碑めぐり(2017年9月22日)

  歌碑 写真 内容


婇女乃 袖吹反 明日香風 京都乎遠見 無用尓布久
采女の 袖吹き返す 明日香風 都を遠み いたずらに吹く」
万葉集:巻1-51 作者:志貴皇子  
揮毫:犬養孝(001)S42('67)/11/12
場所: 奈良県高市郡明日香村豊浦(甘樫丘中腹)
訳:采女の袖を吹き返した明日香風は、都が遠くなったので、ただ空しく吹いていることよ。













吾里尓  大雪落有  大原乃  古尓之郷尓  落巻者後(巻2-103)
吾岡之 於可美尓言而 令落 雪之摧之 彼所尓塵家武(巻2-104)
「わが里に 大雪降れり 大原の 古りにし里に 降らまくは後」
万葉集:巻2-103 作者:天武天皇
訳:わたしの里に大雪が降ったよ。あなたのいる大原の古びた里に降るのは もっと後のことでしょう。

「わが岡の おかみにいひて 降らしめし 雪の摧けし そこに散りけむ」
万葉集:巻2-104 作者:藤原夫人
訳:わたしのいる岡の水の神様に言いつけて、降らせた雪の砕けたとばっちりが、そこに散ったのでしょう。
揮毫:犬養孝(022) S56('81)4/26
場所: 奈良県高市郡明日香村小原(大原神社)



神社
皇者  神尓之座者  赤駒之  腹婆布田為乎  京師跡奈之都
「大君は 神にしませば 赤駒の はらばふ田居を 都となしつ」
万葉集:巻19-4260 作者:大伴卿
揮毫:犬養孝(051)H1('89)4/16
場所: 奈良県明日香村飛鳥(飛鳥坐神社 )
訳:大君は神でいらっしゃるので、赤駒が腹這う田を立派な都となさった。
大君は天武天皇です。
4 飛鳥坐神社 訳:神の降臨する神なび山は 
守り部のまもる山  
山麓には アシビの花
が群れ咲き 山頂には
椿の花が咲く繊細で美しい山だ  
泣く子をいたわるように人々が大切に守る山である
三諸者  人之守山  本邊者  馬酔木花開  末邊方  椿花開  浦妙  山曽  泣兒守山
「みもろは 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲き 末辺は 椿花咲く うらぐはし 山ぞ 
 泣く子守る山」
万葉集:巻13-3222 作者:未詳
揮毫:会津八一 H23(’11)12/吉日
場所:奈良県明日香村飛鳥(飛鳥坐神社)
飛鳥坐神社 訳:玉串を立て
御酒の甕を据え奉る
神官達の髪飾りの
ひかげの葛を見ると
心がひき込まれ
ゆかしく見える
今日の祝いに
幸あれかし
五十串立  神酒座奉  神主部之  雲聚玉蔭
 見者乏文
「斎串(いぐし)立て 神酒据(みわす)ゑ奉(まつ)る 祝部(はふりへ)の うずの玉かげ 見ればともしも」 
万葉集13-3229  作者:未詳
揮毫:鈴木葩光 H23('11)12/吉日
場所:奈良県明日香村飛鳥坐神社


山振之  立儀足  山清水  酌尓雖行  
道之白鳴
「山吹の 立ちよそひたる 山清水 汲みにゆかめど 道の知らなく」
万葉集:巻2-158 作者:高市皇子
揮毫:犬養孝(125)H12('00)4/1
場所: 奈良県高市郡明日香村岡1150(犬養万葉記念館)
訳:山吹が咲いている山の清水を汲みに行きたいが、そこへ行く道が分からない。




明日香河  瀬湍之珠藻之  打靡  情者妹尓  因来鴨
「明日香川 瀬々の玉藻の うちなびき 心は妹に 寄りにけるかも」
万葉集:巻13-3267 作者:未詳
揮毫:犬養孝(065) H4('92)12/4
場所: 奈良県高市郡明日香村岡 -飛鳥周遊歩道 南都銀行明日香支店付近の飛鳥川沿い
訳:明日香川の瀬々の玉藻がうちなびくように、心はあおの娘になびき寄ってしまった。



世間之 繁借廬尓 住々而 将至國之 多附不知聞
「世間の 繁き仮廬に 住み住みて 至らむ国の たづき知らずも」
万葉集:巻16-3850 作者:未詳
揮毫:犬養孝(078)H4('92)12/4
場所: 奈良県高市郡明日香村(川原寺前)
訳:世の中という煩わしいことが多い仮の住みかに住み続け、死後に行き着く浄土の様子はわからない。




明日香川 明日文将渡 石走 遠心者 不思鴨
「明日香川 明日も渡らむ 石橋の 遠き心は 思ほえぬかも」
万葉集:巻11-2701 作者:未詳
揮毫:犬養孝(108)H7('95)9/9
場所: 奈良県高市郡明日香村稲渕(飛石付近の石橋)
訳:明日香川を明日も渡ろう。飛び石のように思いに隙間はありません。
10





立念 居毛曽念 紅之 赤裳下引 去之儀乎
「立ちて思ひ 居てもそ念ふ くれなゐの 赤裳裾引き 去にし姿を」
万葉集:巻11-2550 作者:未詳
揮毫:犬養孝(104)H7(’95)1/18 *前日は阪神大震災で、この日は少し遅れて被災された自宅から何とか到着されたとの逸話を岡本先生から聞きました。
場所: 奈良県高市郡明日香村平田(高松塚古墳前小丘)
訳:立っては思い座っても思う、紅の赤裳の裾を引いて去っていったあの人の姿を。
11 飛鳥寺 訳:古き京(みやこ)、飛鳥の神岳に登ってみると、三諸の神名備山=神の降臨する神名備山、緑繁る栂の木は、次から次へと枝を広げ、天高く伸びゆく玉葛のように、絶えることなくいつまでも、ずっとこのように通いたいと思う。
 旧都、明日香は、山が高く、川は雄大である。
 春の日は、山をずっと眺めていたいし
 秋の夜は、川音が清らか
 朝雲に、鶴が乱れ飛んで
 夕霧には、かわづが騒いでいる
見る度に、声に出して泣けてくる、栄えていた古(いにしえ)を思えば。
・明日香川の川淀をじっと離れずに立ち込めている霧、なかなか消えることのない霧のように、私の明日香への慕情(=恋)はそんなに易々と消え去るような思いではないのだ。
三諸乃 神名備山尓 五百枝刺 繁生有 都賀乃樹乃 弥継<嗣>尓 玉葛 絶事無 在管裳 不止将通 明日香能 舊京師者 山高三 河登保志呂之 春日者 山四見容之 秋夜者 河四清之 <旦>雲二 多頭羽乱 夕霧丹 河津者驟 毎見 哭耳所泣 古思者
「みもろの 神奈備山に 五百枝さし しじに生ひたる つがの木の いや継ぎ継ぎに 玉葛 絶ゆることなく ありつつも 止まず通はむ 明日香の 古き都は 山高み 川とほしろし 春の日は 山し見が欲し 秋の夜は 川しさやけし 朝雲に 鶴は乱れ 夕霧に かはづは騒く 見るごとに 音のみし泣かゆ 古思へば」
万葉集:巻3-324 作者:山部赤人
反歌
明日香河  川余藤不去  立霧乃  念應過  孤悲尓不有國
「明日香河 川淀さらず 立つ霧の 思ひ過ぐべき 恋にあらなくに 」万葉集:巻3-325
揮毫:佐佐木信綱(歌人、国文学者)
 S12('37)4/4
場所:明日香村飛鳥 飛鳥寺
12
飛鳥坐神社
折口信夫
柳田国男の高弟で、民俗学者・国文学者でもあり、詩人。
釈迢空(折口信夫)の歌碑。
「ほすすきに 夕ぐもひくき 明日香のや わがふるさとは 灯をともしけり」 迢空
折口信夫は飛鳥坐神社の神主家・飛鳥助信の六男、造酒ノ介を祖父に持つ
大正5年に「口訳万葉集」を出版した。
揮毫:折口信夫 昭和32年(’57)
場所:奈良県明日香村飛鳥坐神社