2023年度

『 万葉集』に親しむ~人麻呂の旅の歌~ 2023年9月15日

9月のカレンダーの歌は「のかんぞう」。野カンゾウは万葉集では忘れ草という名前で出てきます。忘れ草は万葉集に五首出てきます。忘れ草は忘れたい時に謡われています。
今年は柿本人麻呂 没後1300年と言われ、人麻呂が亡くなった地と思われる山陰の益田市で柿本人麻呂のフォーラムが行われました。大伴家持は、「山柿(さんし)の門」とよんで柿本人麻呂を賛仰し、山部赤人の歌にも多大の影響を与え、紀貫之も「うたのひじり」と呼び、藤原俊成も時代を超越した歌聖として仰ぎ、和歌の神として全国各地に柿本神社が創設され、歌道継承のシンボルとされました。又、人麻呂は安産の神(人生まる)、安全の神(火止まる)だけでなく恋愛の神としても拝まれている。
万葉集に人麻呂歌集364首、人麻呂作歌84首、勅撰21代集260首があり、今回は旅をテーマの歌18首を勉強しました。
羈旅(たび)の歌8首の1首目は、難訓歌ですが、「御津の崎 波を畏(かしこ)み 隠江(こもれえ)の 舟公宣奴嶋尓(ふねなるきみはぬしまにのらす)」と紹介いただきました。この旅の歌8首は、瀬戸内海の旅を行く時と帰りの時の旅情を大和歌にしたものです。他、近江へのの歌4首、筑紫の国の歌2首、伊勢の国の歌3首を教えていただきました。
写真は、第3-226 柿本人麻呂 大津柳ヶ崎 犬養先生揮毫歌碑
「近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに 古思ほゆ 」

『 万葉集』に親しむ~海ゆかば~ 2023年8月18日

8月のカレンダーの歌は「ときじきふじ」。この夏ふじは、季節はずれに咲くので土用フジともよばれる。
「わがやどの 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹が笑まひを」(巻8-1627)家持が妻である坂上大嬢に送った歌で、前後4首の中にあり、妻と夫の恋文の歌です。
「海ゆかば」の歌は、家持が聖武天皇が大仏建立の宣命の中で、大伴家の忠誠を讃えた事に感激し「陸奥国より金を出せる詔書」を賀ぐ長歌(532文字)の一節から原詞を取った昭和12年作曲の国民歌謡です。戦争中には、鎮魂歌としても使われました。
昭和万葉集(昭和54・55年刊行)の紹介もありました。この万葉集は、昭和50年間の激動の日本人の庶民の生の声の5万首が謡われています。
内容は「巻一、 昭和時代の開幕 ・巻ニ、 軍靴の響き ( 満州事変 )・ 巻三、 ニ・ニ六事件 ( 軍国主義の台頭 )・巻四、 日中戦争 ・巻五、 大陸の戦火・ 巻六、 太平洋戦争の記録・巻七 、山河慟哭 ( 焦土と民衆 )・ 巻八、 復興への槌音・ 巻九、 冷戦の谷間で ( ー朝鮮戦争ー )・巻十、 独立日本・ 巻十一、 戦後は終った (テレビ時代の幕開け )・ 巻十二、 都市化の時代・巻十三、 60年安保の嵐・ 巻十四、 東京オリンピック・ 巻十五、 昭和元禄・ 巻十六、 万国博と70年安保・巻十七、 日中国交回復・ 巻十八、 高度成長の終焉・ 巻十九、 戦後日本の総括・巻二十、 昭和50年の回顧・ 別巻 昭和短歌・資料編」です。(犬養万葉記念館に所蔵されています)
「誰やらが 書きしか母と いふ文字の 机の隈に 薄く残れる」
「さがし物ありと 誘ひ夜の蔵に 明日征く夫は 吾を抱きしむ」

『 万葉集』に親しむ~七夕を詠う~ 2023年7月21日

7月のカレンダーの歌は「こけ」。万葉集には「こけ」は11首あります、カレンダーの歌は蘿席(こけむしろ)を詠ったものです。「み吉野の 青根が峰の 苔席 誰か織りけむ 経緯なしに」 。
後の10首は「苔生(こけむ)す」の言葉が入った大和歌を、前後の歌や題詞と共に紹介いただきました。苔の歌の最後は祝歌で、古くから祝いの席で詠われたものです。
更に反歌の巻13⁻3239「斎串(いぐし)立て 神酒(みわ)据ゑ奉(まつ)る 神主(はふりへ)の うずの玉(たま)陰 見ればともしも」の歌碑は明日香村にあります。
苔の歌の最後に古今和歌集の「我が君は 千代に八千代に 細石の 巌となりて 苔の生すまで」が明治11年に国歌として生まれたとの紹介もありました。
後半は、大伴家持の七夕の歌は13首です(七夕歌は130首以上あります)。最初の歌は、星田妙見宮にある歌碑の歌で家持が21歳に作った、織姫が舟に乗って出かけるという中国七夕伝説風の作品です(17⁻3900)。
18⁻4125~4127の長歌と反歌。20⁻4306~4313の七夕の歌八首を学びました(この作品群は、学者から七夕の歌は2首しかなく七夕の歌とするのは疑問との説があると)。
尚、プリントに無い19ー4163 題詞 豫作七夕歌一首「妹が袖 我れ枕かむ 川の瀬に 霧立ちわたれ さ夜更けぬとに」を勉強しました。

『 万葉集』に親しむ~草壁皇子挽歌~ 2023年6月16日

スタートは、「いはゐつら(すべりひゆ)」と「 たはみづら(ひるむしろ)」で「「らんまん」にも出ていた植物の東歌の紹介がありました。5月のカレンダーの歌は、「むらさき」です。端午の節句には薬狩の行事が行なわれていました。蒲生野で行われた薬狩での額田王と大海人皇子の万葉歌の紹介がありました。6月は「ねぶ」の万葉歌紹介がありました。

草壁皇子の挽歌ですが、 柿本人麻呂 巻2⁻167長歌にある、〈一の云う「…」〉は柿本人麻呂の歌の特徴で、歌の原文・下書きとの事です。反歌168・169の次の170は高市皇子の歌とも言われています。
次に草壁皇子の舎人の挽歌23首では、真弓の岡・佐田の岡の犬養先生が書かれた明日香村の風情を感じました。ここに星のリゾートのホテルが建設されるそうです。


『 万葉集』に親しむ~龍田の桜~ 2023年4月21日

冒頭、毛利代表から2022年度の会計報告をさせていただきました。
最初は岡本先生から4月6日の万葉うたがたり会のコロナ後の初コンサート(キトラ古墳四神の館)の様子の楽しい報告がありました。(ここをクリックするとうたがたり会にジャンプします
今月の花は(つつじ)です。つつじは万葉集には、七首あります。カレンダーのつつじの万葉歌は、巻13にある問答歌の長歌です。巻13は、古い時代の万葉歌で問答歌が多く載っています。柿本人麻呂歌集のつつじの長歌(⑬3309)は、男歌で始まり、途中で女歌になります。この歌を基にして、男歌(⑬3305・3306)と女歌(⑬3307・3308)で、岡本先生の【花さく娘子たち】に歌われています。
後半は、龍田の桜で5月にウォーキングする万葉歌の紹介です。龍田路には、万葉時代の五大関の一つの龍田関が儲けれられ、風神を祭る龍田大社もあります。犬養先生は、散り流れてくる桜の風のなかで、これからの遠い旅路を思うとき「ゆめこの花を風にな散らし」の願いも、むかしのことではないような気がしてくると言われています。他に虫麻呂の龍田大社にある長歌、磐瀬の杜の鏡王女、信貴山下駅の山上憶良、三室山遊歩道の家持の歌の説明もいただきました。巻⑨1747~1750の岡本先生の歌【散りな乱れそ】です。
*上記の【花咲く娘子たち】もクリックすると2022年高岡万葉まつりの上さんの歌も聞けます。