2022年度

『 万葉集に親しむ』~鮎子さ走る~ 2023年3月17日

今月のカレンダーの花は(シキミ)です。シキミは黄色い花で実は猛毒があり、遣唐使や鑑真和上が持ち帰ったと言われています。
今月は佐賀県の万葉歌です。「鮎子さ走る」は、大伴旅人が松浦川(玉島川)に遊びに行った時の万葉歌11首の中に出てくるフレーズです。11首は、大伴旅人の貴族的教養(老荘思想・唐土の文芸)と神功皇后の伝説、玉島の山川の景観が、これらの歌の形成の根本にあると犬養先生が述べられています。
「春されば 我家の里の 川門には 鮎子さ走る 君待ちてがな」
又、この地方の言い伝え「松浦佐用姫ひれふり伝説」を大伴旅人が創作したと言われる万葉歌等もを学びました。
     ↓ひれふり山(唐津市 鏡山)

『 万葉集に親しむ』~浦島伝説~ 2023年2月17日

【サンバでツバキ】の万葉歌の紹介でスタートしました。
今月のカレンダーの花は(椿)です。桜井市金屋あたりにあった万葉時代で最も大きな市場=海石榴市(つばいち)で、男女の出会いの歌垣が行われていた万葉歌や、三輪恵比寿神社の初恵比寿の行事(三輪そうめんの相場・餅まき)の紹介がありました。
古代の椿はカレンダーの写真のような山の中に咲いているヤブツバキで、今月の万葉歌は古代歌謡形式の歌で、犬養先生は古い子守唄と言われています。海石榴の漢字は中国で生まれ日本の椿を意味します(日本の固有の椿から作った椿油は中国で珍重されていました)。その漢字が日本に伝来したと教えていただきました。
今年の2月11日に3年ぶりに大宰府の梅花の宴が開催されたました。久しぶりに参加された時の様子を語っていただきました。
大伴旅人の息子の梅花の宴の思い出の短歌【書持(弟)の短歌6首と家持(兄)の短歌1首】が万葉集にあります。
書持の歌は、梅花の宴から10年後に作られ、梅花の宴に最初に歌われた大弐紀卿(正月立ち…)を受けてのものです。先生の歌曲【梅の園】の8首についても勉強しました。
今月のテーマ「浦島伝説」です。高橋虫麻呂の水江の浦島子を詠む長歌と反歌は見事に浦島太郎を歌っています。、又、丹後風土記の中の浦島歌謡6首と犬養先生の浦島伝説解説から、浦島伝説を詳しく学びました

*桜井市 玉列神社(たまつら神社)椿まつり(2023年は3月26日11時から。大神神社のお祭りです)
 下は 2017年の椿まつりで、地元の皆様の御接待もありました。

『 万葉集に親しむ』~柿本人麻呂~ 2023年1月20日

3年ぶりの新年講座。
1月カレンダーのゑぐ(くわい)の紹介からスタートです。富田さんからクワイの実の提供もありました。
もう一つのカレンダーの歌は11月の【うはぎ(ヨメナ)】で讃岐(沙弥島)での柿本人麻呂の歌です。今年は人麻呂の没後1350年で柿本人麻呂の生涯を学びました。万葉集に80首以上と万葉集内の人麻呂歌集、勅撰和歌21代集には260首程の歌が人麻呂作とされています。
古来、和歌の神と崇拝され各地に人麻呂神社が設立されています(明石や島根県(多数)、奈良県(多数)等全国にあります)。
雷丘の犬養先生揮毫の生前最後の歌碑(121番目)紹介がありました。
大君は 神にしませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも(3⁻235)柿本人麻呂
講座終了後は、ジャンケン大会で 先生のCD争奪戦をしました。

『 万葉集に親しむ』~遣新羅使人の旅④~ 2022年12月16日

カレンダーは、龍田のやま🌸のもみちの歌です。もみちそめたり(万葉仮名=黄始有)と、万葉集では黄葉と記載されています。
天平8年(734)第35回の遣新羅使は、当初は6月1日難波を出発し秋には帰国予定であったが、台風の為に はるかな日数を要して新羅に渡った。しかし何の使節の役も果たせず、翌天平9年1月に往路の半分の人数 百余名のみの帰国で、大半は流行した天然痘の病死で惨憺たる使節であった(大使も帰りの対馬で病死=天然痘?)。 
*遣新羅使が帰国した天平9年に、当時 政治の中枢だった藤原四兄弟が天然痘で相次いで無くなり、玄昉が台頭してくる。
7月1日 九州 引津の浦からスタートです。さ雄鹿の歌では、万葉集の動物の勉強をしました「馬・鹿・猪の順番に多く歌われ、猪は(「十六」と書いて「しし(四×四)」と読まれています。」
季節は、もう秋で、妻恋しくなる歌が多く出てきます。
唐津の狛島(柏島、神津島)には、ここで歌われた7首全部の犬養先生の歌碑があります。
神集島(かしわじま)万葉歌碑めぐり(←をクリック下さい。7歌碑の唐津市の紹介です)
次は、壱岐の島で雪連宅満 (ゆきのむらじやかまろ)が鬼病(天然痘)で亡くなっていまいます。その挽歌9首が長歌と反歌で歌われています。
対馬の浅茅湾(あそうわん)で新羅に渡る前の歌13首(5日間滞留)も妻への想い・都への郷愁が歌われています。新羅では充分な勤めをはたぜず、帰りの対馬で大使は亡くなってしまいます。帰国時の歌は、瀬戸内海の家島の5首のみです。
来年の兎の歌(1首)と新年の歌3首紹介で今年の講義は終わりました。
*参考 兎の歌
 等夜(とや)の野に 兎(をさぎ)狙(ねら)はり をさをさも 寝なへ児(こ)ゆゑに 母に嘖(ころ)はえ
 訳】 等夜の野でをさぎ(ウサギ)を捕まえようと狙う―そのをさぎではないが、おさおさも寝ていない
 あの子のせいで母親に叱られて。東歌 巻十四 三五二九番歌

『 万葉集に親しむ』~有馬皇子物語~ 2022年10月21日

ハギ(萩、胡枝花 Lespedeza)とオギ(荻:Miscanthus sacchariflorus)の話からスタートしました。漢字は同じです。オギはスイネ科ススキ属の植物の一種ですが、ススキでもありません。
違いはhttp://w2222.nsk.ne.jp/~mizuaoi/36susukitoogi.htm
又、「ぬばたま」(ヒオウギの黒い実)と種の話も。(田村さんと水盛さんから 実物の提供受けました)
カレンダーの歌は、からたち(ミカン科)です。からたちの棘の歌ったナンセンスソング。
今回は有馬皇子で古代の二大悲劇の一つを日本書紀も交えての講話でした。
有馬皇子は松の枝を結んだ1首と椎の葉にもった飯 1首で辞世の歌を、長忌寸奥麻呂2首・山上憶良1首・柿本人麻呂1首を岩代の松で有馬皇子を偲んで歌っています。
有馬皇子は、赤兄臣の謀り事(バックに中大兄皇子:土木王と言われていた斉明天皇=中大兄皇子への反感の空気の中)で処刑されました。悲運の歴史の舞台 藤白坂で19歳の有間皇子の心中はいかばかりだったのでしょうか。11月11日に有馬皇子まつりが藤白で行われています。
犬養先生の岩代の章では【岩代の断崖の松原から、薄青くかすむ白浜瀬戸崎の突出をのぞむとき、この二歌の心は、千三百年の時をちぢめて、いまの心のひびきとよみがえるのである】が印象的でした。
左下:岩代海岸から白浜方面を望む 右下:有間皇子結松記念碑(南部町西岩代 国道42号 脇)(馬場先生のFacebook写真からです)

『 万葉集に親しむ』~仁徳天皇と磐媛~ 2022年9月16日

10月に開催される「高岡万葉まつりの応募動画」を紹介しました。撮影と編集の鉄具さんや歌唱された会員の皆様、ありがとうございました。
カレンダーの歌は、はぎ(マメ科)です。萩は、万葉集では沢山歌われています。又、万葉集の全20巻の構成を各巻毎に特徴と内容を解説していただきました。
今月は11月の万葉ウォークに行く磐媛の歌を学びました。巻2の最初の歌で万葉集の中で一番古い歌です。
仁徳天皇は第16代で、聖帝とみなされ宋書の倭の五王の一人で、民を慈しみ河内平野の開発に努めた伝承が残っていてます。しかし、女性関係は問題がありました。
そのお妃が磐の媛で3人の天皇の母で、激しい嫉妬の話が伝わっています。仁徳天皇陵傍にある磐の媛の五首は、情熱的な女心を歌っています。
「君が行き 長くなりぬ 山尋ね 迎へか行かむ 待ちにか待たむ(2-85)」 磐媛は、何日も仁徳天皇を待ち続けてたので、は複数なので(け)と読みます。一日の場合は(ひ)と読みます。【白文:君之行長成奴 山多都祢 迎加将行尓 待可将待】。(写真の一番右の歌碑で、犬養悦子さん揮毫です)
又、古事記の仁徳天皇の黒日売、八田若朗女への歌も、勉強しました。古事記では、仁徳は磐媛を追いかけて謝り丸く収まりますが、日本書紀では、磐媛は都には生涯、帰って来ませんでした。
 ↓仁徳天皇陵にある磐媛の万葉歌 5首の歌碑(揮毫 犬養孝 4基、犬養悦子 1基)

『 万葉集に親しむ』~遣新羅使人の旅③~ 2022年8月19日

最初は、安曇野の犬養先生の万葉歌碑の現状の紹介でした。
8月のカレンダーの花は「かじの葉」で略体歌(少ない時数の万葉仮名)で書かれています。これは人麻呂が関わっているとも言われています。昔は、かじの葉に手紙を書いていました。
山上憶良の秋の七草2首の紹介もありました(下記に秋の七草のYoutubeをリンクしています)。
遣新羅使の歌③ですが、今回は山口県(周防)麻里布の浦からのスタートです。都に残した妹を想い懐かしみ、麻里布の浦、可太の大島、伊波比島、大島の鳴門、熊毛の浦、可良の浦の風情と共に、望郷と不安を織り交ぜた秀歌です。
この後に周防灘(佐婆の海中:さばのわたなか)で、逆風漲浪に遭い大分県中津付近まで漂着してしまいます。時節は、もう秋(=七夕)で当初の予定では帰路の時であった。秋風や、雁の鳴き声から、妻と契った衣も汚れてきてしまったと、筑紫の国で歌っています。
   【麻里布の浦】*              【祝島】* *荒川晴男さん提供

 

 

 

 

 

 

 

 

山上憶良の【秋の七草】動画:2018年秋 交野が原万葉学級 万葉うたがたり会コンサートから秋の七草をリンクしました。歌は 園田知子さんと上 未歩さん。下記をクリックすると再生します

https://youtu.be/o2-6r2jK1BI?t=167

『 万葉集に親しむ』~石見相聞歌~ 2022年7月15日

今回は6月の「はちす(はす)」。蓮葉の水玉の歌2首と蓮葉にちなんだ比喩の歌を
学びました。
当時は蓮葉や、うも(芋)の葉を食事の時にお皿として使用していました。
7月の花は「うきまなご(うきくさ)」1首 紹介していただきました。




今月は、高岡万葉まつり応募に天の川慕情(巻8⁻1520)を合唱、巻8⁻1527を全員で朗唱を録画しました。皆様のカラオケ練習の成果もあり、見事に合唱・朗唱できました。ありがとうございました。
今月のテーマの石見相聞歌も学びました。持統天皇の宮廷歌人「柿本人麻呂」の歌で、犬養先生がこの万葉歌(巻2⁻131)を「人間的情感の豊潤な波動は、風土の意識的な取り入れでなくて、自然の融合となって、自己から対者への一貫した統一対となし、緩急自在な律動のうちに、壮麗な恋情の交響楽を作りあげている」と賛歌されています。
高見山の反歌2首(巻2⁻132、133)も「冷たい風の吹くさびしい石見の山道での、ひとりに我にかえってゆくのだ」と。

 石見の海  大崎鼻(韓の崎)             島根県 江津市 野頭  柿本神社 
                          揮毫 犬養 孝 第2巻 132番 柿本人麻呂










石見シンフォニー(2020年高岡万葉まつり応募分 万葉うたがたり会 歌 園田知子さん)が見れます。是非ご覧ください。https://youtu.be/CounuHzN7YE


『 万葉集に親しむ』~鳥と言えば、ホトトギス~ 2022年5月20日

今月のカレンダーの花は『かきつはた』です。この家持の歌は26歳の時に恭仁京から奈良に戻った時の6首の最後の歌で、カキツバタの染料で染めた衣装を着て狩りする姿を詠った端午の節句の短歌です。
犬養先生の『かきつはた』‐住吉大社の浅沢小野の紹介(巻7‐1361)もありました。
この6首中4首がホトトギスの歌です。ホトトギスは153首(内64首は家持)と万葉集で一番多い鳥です。
次は弟の大伴書持(ふみもち)が奈良から恭仁京の兄の家持に送ったホトトギス2首、それに答えて家持が3首【内1首は楝(あふち)=センダン)に戯れるホトトギス】で返歌しています。(巻17‐3909~3913)
ホトトギスは立夏の日に来鳴く事を必定(夏告鳥)とされていましたが、田口朝臣馬長や家持は、季節が来ているのにホトトギスが何故鳴かないのだと嘆いています(巻17‐3914、3983~84、巻19‐4194~96)
興味深かったのは、ホトトギスは、うぐいす等の巣に卵を産み、自分で巣を作ることも抱卵することもせず、他の種類の小鳥の巣に卵を預けて抱卵、育雛をまかせるという寄生的な繁殖習性を持つ鳥なので、この習性を歌った長歌を大伴家持が「霍公鳥よ、昔から語り継いできたように鴬=うぐひす(春告鳥)のほんとうの子どもであるのか」と詠い(巻19‐4166 越中)、高橋虫麻呂は長歌(巻9‐1755)で「ウグイスの巣の中で、育ての親と似ては鳴かずと』歌っています。
ホトトギスの鳴き声のyotubeです。ここをクリック下さい。【テッペンカケタカ】【 テッペンハゲタカ】【トッキョキョカキョク】どの鳴き声に聞こえますか? 先生からの宿題は『本物の鳴き声を聞いてね!!!』です。

『 万葉集に親しむ』~花咲く娘子たち~ 2022年4月15日

最初に明日香の話で、TVで飛鳥太鼓や、火野正平さんのサイクリング番組で明日香が放送された事や、明日香法施行40周年記念で犬養先生と明日香法についての先生の講演紹介がありました。
カレンダーの花は、けい(しらん)で越中で歌われました。家持の歌の半数223首が越中です。
巻17‐3965~3972は、序文と短歌、長歌から構成されて、越中に赴任した時に家持が大病を患い、苦しい時期を乗り越えてた後の春の季節の、友人である大伴池主との間の歌です。
けい(しらん)は、池主の歌の序文に『・・豈(あに)慮(はか)らめや 蘭蕙(らんけい) 藂(くさむら)を隔て 琴罇(きんそん)用ゐるところ無く 空しく令節(れいせつ)を過して・・蘭と蕙が草むらで隔てられていたように、病気であなたと会えなかつた⁻⁻⁻』と歌われています。けいは、万葉集のこの序のみに載っています。
ー歌だけでなく序文も、素晴らしい名文です―。
17‐3969の家持の序には、『山柿の門に逕らず』と書かれており、柿=柿本人麻呂ですが、山は山上憶良OR山部赤人どちらなのかが、万葉学者の間で論争になっているとの事です。
又、桜🌸と共に、うぐひす(鶯)も3首、歌われており『春つれづれ』の先生の歌になっています(2首:17‐3966、3968と生野区横野にある万葉歌碑:10‐1825)。クリックすると、横野万葉歌碑ページにリンクします。
後半のテーマは「花咲く娘子たち」で問答歌です。巻13‐3305~3308(作者未詳)ですが、元歌は柿本人麻呂が詠っています(巻13‐3309)。
下は上さんが2021年の高岡万葉祭りで歌われた動画です(先生の花咲く娘子たちの歌を、高岡万葉まつり用にアレンジされたversionです)。もう一つの問答歌は、泊瀬小国の万葉オペレッタの紹介がありました(巻13‐3311~3313)
*6月の万葉ウォークは、明日香・牽牛子塚古墳を巡ります。(近鉄ダイヤ改正があるので、決定版を5月例会で配布します)